まもなく小屋入り。

土曜日の稽古も終了しました。宮川賢です。家でpcを開かなくなったので、更新減ってすいません。元気でやっとります。
今回の公演では、初めてご出演頂く役者さんが何人かいます。村瀬千佳子さんと妹尾青洸さんです。村瀬さんは、見た目コミカルな奥さんをやって欲しくてお願いしました。宮川の奥さん役です。
そして妹尾青洸さん。一度、もう十年以上前かしら。球団ゼッツの公演に僕が芝居を書き下ろして演出した時にその公演に出ていた方です。この妹尾さんという方は非常におもしろい人で。直情的でバカ正直で素直で楽しい人なんですね。ある意味あこがれというか。
もともと、芝居を書く、ということになると、その役者本来が持つ魅力や過去、背負ってきた人生を反映させることがよくあります。もちろんそれは、その背負ってきたものは必ず中にある訳だし、リアリティが強いから。また、嘘がない事がはっきりしているからです。
過去の話になるけれど、「インスンデル」という芝居で小出由華ちゃんに出てもらったのですが、彼女幼い頃から芸能界におり、当時から爆発的人気を誇っていた番組に出演してたのね。で、その頃に、いじめを受けるような体験が多少あったらしく。それを打ち勝つべく挫けず学校へ行き続けた話をそのさらに数年前「スクールランブル」というミュージカルで演出した時に四方山話で聞いた事があって。インスンデルでの彼女がいじめを受ける役を小さなエピソードで書いたら、彼女は「ちらっと話したことを宮川さんは覚えてたんだぁ」と気づいたそうな。あえて書いた訳じゃないんだけど、その話を聞いた時の小出の「でも、そんなことで登校拒否になってる場合じゃないだろってんで、がんばって行きましたけどね」って答えがキュンと来て、偶然そういう台本になっただけなんだけど。
ともあれ、演出家が劇作家となると、その役者の魅力を存分に引きだそうと努力する。その人の素の魅力をどれだけ舞台にちりばめられるかに燃える、というか。
で。妹尾さんなんだけど。この人を「ああ、いい人だなぁ」と思ったエピソードがあって。それがずっと残っていて。それがこの方をいずれお願いしたいなぁ、と思っていた理由なんです。
前述の球団ゼッツの公演で芝居を書く事になった時、メンバーをほとんど知らなかった僕と親睦を深めるという意味で、球団ゼッツのみんなと僕とでキャンプに行こうということになって。そこには東地宏樹さん、藤崎卓也さん、妹尾青洸さん、奈良チャボさん、高田裕司さん、元劇団員とかがいたのね。そこで酒飲んで楽しく過ごした事で、みんなを理解して、それを元にして芝居を当て書きしようと思って。
そのキャンプの飲み会で。とある元劇団員の役者のお父さんの話になって。
ある公演のあるステージで上演中にブツブツしゃべっていて、周りのお客様に迷惑をかけているお客様がいて。ついに近くの他のお客様に指摘されておとなしくなったらしいんだけど。終演後の輪組みでも「あのお客様には困ったねぇ」なんて話していたら、実はビタミン大使「ABC」のメンバーの役者のお父さんだったのね。んもぉ~。なんて言ってた、そのエピソードをキャンプで話してて。
全く、あれには困ったよぉ、なんて話していた時に、ふざけ半分でその元団員も「いやあ、もう二度と呼ばないんで。でへへ」なんて言ってたんだけど、妹尾さんは真顔で怒って「いやあ、それはそれで、また呼べよ。親で見て欲しいって思ってるなら、呼べよっ!」と声を荒げて鼻息も荒い。飲み会はシーンとしちゃってるんだけど、つまりみんな(おとなしくしてくれてるなら、また呼ぶのは構わないんだけど、この飲みの場では、二度と呼ぶなよ!ってことにしておいたほうが一応おもしろいから)的なムードになっている中、かなりKYな感じ。
これが、僕のハートをわしづかみ。「あああ、なんていい人なんだろう」と。いい人っていっても、もしかしたら多少迷惑かもしれない「いい人」なのかなぁ。直線的な性格のいい人。
親を愛するってことは誰でももってる当たり前の事で。でも、親が迷惑をかけたなら、子が謝って反省するのは仕方ない事なんだけど、でも「いや、呼べよ。また公演ある時、呼べよ!」って怒ってる姿が、ホントすてきだなあって思って。
何年も前に公演の打ち上げで奈良チャボさんにこの事を話したんだけど「あぁ、そんなことあったような気もしますねぇ」程度であんまり引っかかってない。僕はハートわしづかみされたんですけどね。
で。稽古の開始の折に、3/11の震災を受けて、「公演とどう向き合うか」「どう作るか」「どう気持ちの整理をつけるか」などの話をした時に(ちなみに精神的ダメージが大きい人は遠慮なく名乗り出てくれれば降板させる、という判断と、やるなら切り替えてがんばろうというような話し合い)、ここでもまた妹尾さんは、
震災直後にボランティアに行く!と被災地に電話して「100人単位で来てくれないと困ります。来なくていいから。そっちで金使っててくんない?」って、やんわり断られちゃってる。この思い込んだらまっすぐなところ。当たり前のように人を慈しむ気持ちを持つ非常にプレーンな愛情に満ちた人。でも、それが時折社会的に不適合に繋がったり、人によっては迷惑に繋がったりするぐらい鋭利な直線的なものであったり。
妹尾さんって人はそんな人なんです。だから、今回の洋太っておバカで愛すべき長男の役は、もろに当て書きなんだけど、そのあたりもあんまり分かってない感じが、ホントにすてきなんです。
稽古して「そういうキャラクターなんです。分かってるけど、単純だからそこまで読めずに目先の事で納得しちゃうタイプなんです」って話をした時に、妹尾さんったら、
「あああ。いるなぁ、そういう奴。うんうん」って。
だから、当て書きだって言ってんのにっ! んもう。ああ。プリティな。そんな愛すべきキャラクター妹尾さんに出演依頼した時は「ゴッドファーザーのジェームズ・カーンでお願いします。血気盛んで一本気な長男」と説明しました。いや、そんなに間違ってはいないですよ。

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