最後の稽古を終えて、荷物の搬出を終了しました。明朝搬入、そして仕込みです。
ようやく劇場入りできるのであります。広い空間で声を出せる喜びは非常に単純ですが、役者に幸せをもたらしてくれます。僕もようやくそれを感じられることでしょう。
ここ数日の、つまり最後の追い込みの稽古で、「力」演技に走る傾向があり、本日それが顕著に悪い形で現出した。うーん。そういう事じゃないのよねぇ。機微は力でなくて「丁寧に組み立てる緊張感」とかなのよねぇ。まぁ、とりあえず力ってのは便利なんだけど、基本幼稚なんでね。
ほら。本編にもあるでしょうに。頭脳で勝負だ! とね。
「引き金をひく機会が多いようだな」「くっ……」とね。
つまり大神田祐輔サイドの考え方ではなく、リコ&シャーマンの考え方でいけば、ことさら「力」は排除しないとなりません、とまぁ、こうなるわけです。
【役者について】
パンフレットを販売しないので、役者について触れときます。
★大神田祐輔役のなしお成。今回は漫画が原作なのでこの役はこの方にお願いしたかった。象徴なのでこういう人でなくっちゃ(笑)。
★木澤豊さん。ダンサーです。体を動かせる人には敵わないと感じさせてくれる人です。楽器を演奏する人と踊り手の人には「文字」や「言葉」を使って表現をする自分は、ホンットに裏口入学してるなぁ、と悲しく思う。言葉って「説明」だしね。「文字」って「そのまま」だしね。「悲しいシーン」を作る時に「ここは悲しいシーンです」って言うようなものだからさ。言葉や文字って。どう歪曲させてもね。勿論その言葉の持つ裏表やキャラクターやタイミングで言う言わないで物語りを作るのが妙味ではあるんだけどね。
★吉永のぞみサン。同じく踊り手。この方もカッコイイです。ぜひ惚れて頂きたい。ちっこいのにパワフルでキュートです。いま携帯ストラップにしたい女性ナンバー1です(笑)。そして「かっこわるいことをかっこいいと思っている」ベース意識は、この方の芝居通しての起用の仕方にも顕れてます。とほほ。
★片桐俊次。通訳の役です。シドニー。いい人すぎるのが玉に瑕。でも、芝居づくりをする上では、こういう強い協調性は頼もしいのであります。
★地脇慎也。役者にはいくつかのパターンがあって、言わなきゃ役を組み立てていけないタイプと、放っておいても役を自分に近づけてモノにしていくタイプとがある。彼は後者で、去年の秋公演のドモリの役でそれをやってのけた。去年のああいった役は、本人が頑張らないとならないもので、普段からその「研究」が必要だ。そして、その役作りこそ「演技者」が「演技」を楽しめる「醍醐味」の部分だ。ただガワだけを提供して書かれた台詞を舞台に届けに行く配達人のような役者も芝居の楽しみ方として間違っていないけど、役をグイグイたぐり寄せる楽しさは稽古場ではなく、稽古場以外の自分の努力とその結実にある。エンターティンメント演劇において体の不自由な役というのは非常にナーバスであり、「しっかりした演技」が必要だった為に、僕も特に注意して臨んだ。それをクリアした時点で彼は僕からの何かの信頼を得たのだと思う。
★岡田ちほ。頑張ってます。真面目でひたむきで。うちに秘める根性がある。打ち上げの酒はこういう人こそが美味しく飲んで欲しい。そんな親心。
★谷川万純。「おはよう!スプーン」にも出演して公演告知してくれた谷川も岡田と同じく、なんだかよくわからない世界に放り込まれる事になった女子(笑)。再演なので、キャラクターに則した方をキャスティングする、という手順だったが、木澤さん吉永さん岡田さん谷川さんの4人は、現場でキャラクターを作って行こうとお願いしたメンバー。明るいキャラクターをそのまま隠し味になるようにこっそり細かいことをやらせてます。
……あ。風呂わいたっ。続きはまた今度っ! もう売り切れてしまうステージが多い人気の公演なので、見た人は得?! かもしれませんっ! さあ。明日が勝負だ。頑張れ、仕込みっ!