左翼だとか右翼だとか以前に僕が言いたいのは、俳優はみんなフリーで仕事をとれよってことだ。

masuyama_rena-001.jpg増山麗奈さんという(母乳パフォーマー/画家/母親/左翼活動家/ロスジェネ編集委員)が、先日、「色道2」にご出演くださった。写メも紹介した通り。本日は、カノジョの生き様に密着したドキュメンタリー映画の試写に行って参りました。


momoirojeanne.jpgタイトルは「桃色ジャンヌ・ダルク」。結論だけを言うと「とてつもなくやる気が勃起した」という次第。


masuyama_rena-002.jpg非戦と反貧困の桃色ゲリラ主宰の増山さんは、強烈なるバイタリティの持ち主であり、イベント「色道2」でも口にしたカノジョの「表現者だからかなぁ」に勃起させられた。

桃色ゲリラの活躍。

ロスジェネの巻き起こした新風。

これらは、誰もが知るムーブメントであるが、どこか「懐かしい」風合いも感じさせてくれた。その懐かしさは、アングラや学生運動の、ほら、あの頃を「今風(バカな言葉)」にしたような肌触りだからだと思う。

しかし、カノジョの立ち位置は模倣でもなぞりでもなく、ただの表現であり、生き方でしかないことは、この映画「桃色ジャンヌ・ダルク」を見れば解る。普通に考えてわかると思うけれど、映像作家が「この人を撮り続けてみたい」そう思わせる人でないと、ドキュメンタリーにはならない。しかも、テレビで「成立」しそうな作品は物事の真実を伝えていない。

3月下旬公開のこの映画を僕は、新宿で見て、声を出して笑った。そして怒りを感じ。そして涙した。「月の石」のレギュラー総出演はご愛嬌。見ると色々なことを考えさせられてしまう。

演劇を作る僕は、常にフェアリーを心がける。そして、自分をノンポリでアパシーに置く。それこそが影響力を帯びかねない表現者のあるべき立場と勝手に考えてきたが、余計な正義感でもある(と自分でも解っている)。

前回の芝居「インスンデル」で時を止める能力を持つ男同士のいさかいで、アメリカかぶれの悪玉(宮地大介演じる百目鬼)に「アメリカこそが地球番長! 戦え! 殺せ!」なる狂信的台詞を吐かせた。コミカルにしてるつもりなんだけど(わざわざ山梨谷梨とかししほんじとかを子分につけてアニメっぽくしてね)、それでもやはり「宮川さん、戦争肯定派?」なんて心ない言葉を貰う。んもー。そんなんじゃないってば。困るなぁ。

表現者は何を表現しても必ず、誰かを傷つけ、誰かを不愉快にさせる。それは仕方のないことで、十分理解もしてるし、これからもそこは潔くありたい。不倫を描けば不倫してる友人女性に「あたしのこと書いたでしょ」と叱られ、「東北沢に住んでる人の80%は『下北沢に住んでる』と答える」と台詞を書けば「東北沢住民を敵に回しましたね」と言われる。勿論、上等なんですけどね。


masuyama_rena-004.jpg上等だけど、経費や税金のようなものと思っている。とはいえ公平性を意識してるのにはかわりなく、今回「桃色ジャンヌ・ダルク」を見るまでは「どうして俺はそんなことにこだわっていたのだろう?」と思わなかった。

国会議事堂で警察に囲まれる増山さん。イラクで絵画を通じて子供や戦争に向き合う増山さん。そのことを発端にして共産党志位氏の会見で挙手をすることになる増山さん(以降自粛)。

増山さんの中には、僕が気にするような一切はなーんもなく、ただひたすらしたいようにしているところがさっぱりしていて気持ちいい。

美術手帖の編集長の絶賛コメントも頷ける。そうそう、増山さんの中では、反戦を謳うのも、母乳アートも、全てが一貫してるし一緒のことだ。その意味は映画を観てわかった。

興味が湧いた人は観てみてください。興味わかなければ、見なくていいです。でも、見た人は、「ああ、見といてよかった」って思うよ、きっと。特に舞台に立つ人。表現者。クリエイターは。

最初。増山さんの「表現」と「反戦」は、本人の中で、どう「向き合っているのか」を考えた(無意味ながらも)。

表現していることを利用して反戦を謳うのか。いやいや、待てよ。反戦の気持ちがエネルギーとなって表現に繋がっているのか。反戦運動を続けたいから自分がへこたれないように表現(ピンクの衣装など)で自分を奮い立たせているのか。

だが、そんなことはとてもくだらなく。全部が彼女だったのであります。そんなことを考えながら見てる自分がバカバカしく感じられた終演後でした。


masuyama_rena-003.jpgとっても元気を貰ったのであります。そして、真っ先に感じたのは、こんなど派手なことをしている癖に、「色道2」のイベントで、黄金咲ちひろ様の色々なフェチビデオを見ながら「へぇ。このイベント面白いねぇ~っ!」とキャッキャ楽しそうにしていたのが可愛らしくて愛おしくて。

これは岩波ホールで取り上げられることさえないであろう作品です。これを見ると、もっともっと見ないとならない映画や演劇が沢山ある、ということに気づくことでしょう。

解りますよね。「売る」「儲ける」という考えのもと発せられる表現は、CMをも打つし、雑誌の宣伝戦略もマス相手に展開する。放っておいても「情報」は耳にマスメディアが届けてくれていると思ったら大間違いであります。面白いものは自分で探さないとなりません。演劇でもパフォーマンスでもライブでもトークイベントでも何でも、「売る努力」よりも「その分面白く」を考えるから、小さい小屋で大した宣伝もせずに(つまり投資をせずに)、売り切れる分だけの座席数の興行を打つのでありますよ。探さないとなりません。こういう映画こそ。

プッシュとプル。プル作業を忘れた大衆に埋没する場合じゃない。そして、この事について、僕が以前から思っていたことは、邦画がテレビと一緒になってしまったこと。以前、映画俳優は、「安っぽくなるから」との理由で、テレビには出なかった。それにより、テレビドラマよりも「世界観」のしっかりした映画作品が沢山あったように思う。映画俳優は、素顔を見せる事などなく、映画の中の登場人物のイメージに七変化できるようにバラエティ番組なんぞには出なかったものであります。

もうける。売る、ということが映画ビジネスでも真っ先に考える話なので(でないとスポンサーがつかないからね)、テレビで有名なタレントを映画で使うようになる。ドヘタだろうが、数字持ってりゃいいや。みたいな。

いえいえ。いるよ。映画を中心にやっている役者も。そう言う人もいるでしょう。確かにいる。でもね。事務所って奴は「儲けない」とこれまたスタッフを食わせていけないワケよ。金になるならたまには大きな仕事を受けようという話になるわけよ。それが会社なのだから。

例えば、隙間に全て仕事を詰め込むY興業のタレント酷使は凄いでしょう? お笑いタレントにドラマをやらせて、エッセイ本を書かせて、ライブをやらせて、24時間営業のルミネに出させて、映画監督をやらせて、漫画を書かせて、小説を書かせて。儲けられるものは全て金に変えてしまえ、という。

特に映画監督は、金持ちがポロチームを持つが如く「成功者の次なる挑戦」の場となった。放送作家が脚本家か放送作家スクール塾長になるののどちらかであるように、有名人は映画監督か政治家になるらしい。勿論、金と勢いのないくたびれてしまった職人の疲弊もあるのだろうけれど、決して歓迎される状況とは思えず。

何が言いたいかというと。事務所に入るから、テレビに出させられるワケよ。世話になった事務所が傾いてるらしい、と思えば、仕事なんか選びたくなくなるよね。お金だって入るわけだし。でも、その結果が銀幕スターを激減させているのであり。

つまらない邦画ばかりがボロボロ消費される事になるのであります。もっともっと、いい映画、面白い映画。癖のある映画。変な映画。ちゃんと表現の自由を満喫している映画を増えて欲しい。その為には、俳優はフリーになればいいのであります。全員がフリー。そうすれば、事務所の儲けを考えずに、好きな映画だけ出られるようになるよ。お金持ちになりたいから、という理由で俳優を目指すのはやめようね。

「左翼だとか右翼だとか以前に僕が言いたいのは、俳優はみんなフリーで仕事をとれよってことだ。」への4件のフィードバック

  1. こんにちは。宮川さん、会場で挨拶できずもうしわけない!いらすと納品などあり17分ぐらいに会場につきました。長く心に響く文章ありがとう!!!最初に御会いしたときに、このひとはエロいけど(笑)単なるエロじゃないな。地をはって表現をし続けてきた人だな、と思いました。なぜならたたずまいが凛とかっこよかったから。
    表現者はばれゃうよね。何処に軸足を持って生きてるかが。座長だけに仲間を守りながら営業もして、大変だよね!私も桃色ゲリラ座長だから少しだけわかるかも、その苦労。
    どこかでホンキのクリエイター談義したいですね!またニンニンチクビもよんでください!

  2. この流れにコメントすること自体、おこがましく思えて迷いましたが、久々にブログを呼んでてしびれてしまったので書き込んでしまいます。宮川さんのコメントだけを先に読んでて、それだけで、「おおー」と感動していたのですが、それに対する増山さんのコメントも。電車の中で、携帯で読んでて、震えてしまいました。ぬるま湯につかる自分も、自分に負けずに生きようと思います。朱に交わっても赤くならずに。

  3. 長村様
    つい、コメントしたくなってしまって。
    朱に交わっても赤くならずに。
    いえいえ、むしろ朱をピンクに染めるぐらいの勢いで(笑)
    と偉そうな事を言ってないで表現者として最低の義務である締め切りを守るべく今日もふんばります。

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