去年の丁度今頃、顔ぶれが決まった「ヒポクリティカルアイランド」の出演者。今年の前半は取材に終止し、後半の夏から台本を書いてその間常に自分の頭の中で動き続けていたメンバーと昨夜お別れし。
何人かとは、ようやく打上で落ち着いて・・・というほどでもなかったけど、話ができて良かったなあと。人に歴史あるのねと。
でもそれはディテールを知るだけで、芝居という共通言語に仲立ちされれば無条件に分かち合えるので、早く深く知っていたかった部分でもなく、というのが打上に丁度良い。
役者は共演者にも演出家にも観客にも、もっと知りたい、もっと見たい、と思わせるのが仕事であり、だから枕営業もしちゃダメよってなことでもあるんにゃけど、その、ちょっとだけ理解しただけで散会する打上の寂しさもまた面白いですね。
僕らにはお金も時間もないから、有名演出家が並んだ舞台衣装候補から「これとこれとこれ」と選べる余裕はないけど、その代わりに僕の決して枯渇しないアイデアの泉があり、それを頼りに今後も目の前に真っ直ぐな道がある。
今作でも割愛したエピソードが沢山。
橋田教授とリィバは「書物」から恋愛成就を図ることで共通し島で同時多発失恋をする、とか、ロンドとシェーの馴れ初め、けん玉の音で恋心を伝えるベッキョとそれを受けてけん玉猛特訓するガヤとか、色々。
中でも最後まで悩んだのが、シェーの手紙。
実はリィバから読み書きの手解きを受けていた島の女。笠原に頑張って手紙を書いたが誤字だらけ。「き」と「ま」を、間違えてるから「好ま好ま、あなたが好まです」など、幼児レベルの字でしたため素田経由で渡そうとするが、空腹のロクゾウが手紙を食べてしまい笠原には届かない。渡したつもりのシェーが笠原に数日後業を煮やして問う。
「お手紙、読んでくれた?」
「え? なんのこと?」
ショックを感じるシェー。ややあって、
「ううん。別に。なんでもない」
で終わる大人の恋。
伝わることが重要ではなく、伝えることが重要なのだとしても、打上でしっかり伝え忘れた部分。出演者のみんな、スタッフの皆さん、そして変わらぬ自己犠牲の精神で公演を回す劇団員に、ありがとう、と言いたいのです。