4月のあの日を忘れない。肝臓移植手術を乗り越えて、エリック・アビダルがバルセロナのピッチに選手としてプレイをするために戻ってきた日のことを。万雷の拍手で迎えられたアビダルは、その後、リーガ優勝のカップを同じく病気を乗り越えて戻ったティト・ビラノバ監督と二人で高々と掲げた。
肝臓移植手術はサッカー選手では初めてのことで、スポーツ選手でも極めてまれ。それを乗り越えて戻る事が出来るだなんて、それだけでも驚異的なのに、プレイをして感動をさせ続けてくれたこの数日間。
なのに、運命は酷なもので、バルセロナは丁度契約が切れるこの天使DFを幹部として迎え入れる旨を本人に告げた。そして本人は現役を続けたい意向をバルサ会長に告げて、退団が決まった。他のチームのオファーはない。だが、現役を続けたいのがアビダルの意思だった。
そりゃそうだ。戻りたくて走りたくて球を蹴りたくて病気に立ち向かってきたのだから。たった数週間ピッチに立つ為だけに一年以上も病気と闘ってきたのではない。それでも、やはりバルサはシビアな判断を迫られた。センターバックの手薄はアビダルの回復で補えると判断はせず、クールにお別れを選択。
この辺りまでは、仕方ないと思えるし、タレントが放送局とお別れするときはもっとクール。これまた仕方ない。
でも、バルサは「アビダルの為の扉は開いたままだ」とはっきり告げた。現役を辞める時が来たら、ぜひバルサでスタッフになってほしい、と。彼の6年に対しての評価はとても高い。6年のうち4年が優勝。そして病気を通じて世界中を勇気づけた。なのにお別れ。涙ながらに退団会見を行ったアビダル。本当にお疲れ様でした。ありがとう。
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「バルサでプレーを続けたかった」
バルセロナDFエリック・アビダルが、今季限りで同クラブを退団することを発表した。同選手は30日、サンドロ・ロセイ会長と一緒に会見に出席。バルサを退団する意思を表明した。
アビダルはクラブから幹部として迎え入れられるオファーを受けていたようだが、現役続行の考えを貫き、涙ながらにバルサ退団の経緯を語っている。
「今日はとても難しい日だ。僕はバルサで6年間プレーした。自分の人生で、最も大きな経験をした場所だ。ここでは素晴らしい仲間を持つことができて、たくさんのことを学んだ。今まで僕に信頼を示してきてくれた監督、フィジカルコーチ、ドクター、困難な時期に支えてくれた人たちに感謝を伝えたい」
「僕の家族、いとこ、妻、娘たちにも感謝を伝えたい。僕は2つの目標を掲げていた。1つ目は娘たちの成長を見ること、2つ目は再びプレーすることだった。僕はバルサでもう一度プレーしたかったけれど、クラブは違う見方をしていた。それを尊重しなければいけない」
アビダルは改めて現役続行を強調している。
「とても悲しかったよ。バルサで続けることを考えていたし、もう一度プレーするために、ずっと闘ってきた。最終的に、2つの道があった。(現役を)続けるか、否か。僕は、ほかのところで続ける」
「僕にとって、決断は難しくなかった。健康が許すなら、バルサで続けたかった。スパイクを脱ぎ、人生を変えることは困難だ。現役を続けたい。バルサとの契約は終了にしなければならない。現時点で、オファーはない。でも、僕にはそれを考える時間がある」
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